【和風総本家】イタリアのヴァイオリン修復師と、のこぎり職人の話

「和風総本家」は10年以上放送されている長寿番組で、日本でもっとも素晴らしい番組の1つです。

職人にスポットを当てて、モノづくりの精神や素晴らしさを伝えてくれます。

長年の放送の中で、突出して素晴らしい、圧倒的な神回のことをご存知でしょうか?

 

いつまでも心に残って離れない、そんなテレビ番組は滅多にないけれど、「和風総本家」で放送されたこの回は、すべてを凌駕する奇跡の回だと思います。

一生に残る本、心から感動した映画、繰り返し聴く音楽、誰にでも1つや2つはそういったものが必ずあのではないでしょうか?

わたしにとってまさに、運命的な僥倖とも呼べる奇跡の回だったのです。

 

圧倒的神回は、イタリアのヴァイオリン修復師とのこぎり職人の話です。

わたしの記憶が正しければ、放送されたのはおそらく2012年くらいだったと思います。

いまとなっては随分と古い話になってしまうのですが、わたしはいまだに昨日のことのように思い出すことができます。

 

「テレビがつまらなくなった」と言われて久しいけれど、この番組を見て、わたしはテレビマンの矜持を見せてもらった、と感じています。

テレビにいる人たちの優秀さ、仕事ぶりに関して畏怖の念すら覚えてくるものです。

ヴァイオリン修復師の物語は、それほどまでに圧倒的に素晴らしい回でした。

 

わたしがこの回に出会ったのは、本当にたまたまのことでした。

もともと「和風総本家」を見る予定はなく、「ガイアの夜明け」か「カンブリア宮殿」を見ようとしてチャンネルを変えたら、曜日が違っていて放送していませんでした。

代わりにやっていたのが「和風総本家」だったのです。

「世界で見つけたmade in Japan」というコーナーで、ヴァイオリン修復師と、のこぎり職人の話が始まりました。

わたしは特に期待するでもなく見始めた、というのがそもそものきっかけです。

 

日本から遠く離れた異国の地を取材し、仕事の現場で日本製のものを使っていないか、を尋ねていきます。

職人が仕事の現場で使っている様子を撮影し、日本製品に対する思いや愛着などを取材していきます。

日本でその製品を作った日本人を探し、製品ができる工程などを見ていきます。

お互いの仕事風景をビデオで見せ合い、最後は互いにメッセージを送る、といった内容になっています。

 

「世界で見つけた made in japan」は「和風総本家」の中でもっとも素晴らしい企画の1つで、毎回深い感動があります。

その中でも格別素晴らしい回が、イタリアのヴァイオリン修復師と、のこぎり職人の話、だったのです。

 

のこぎり職人の東さんの話は、とても悲痛なものでした。

 

東さんは、のこぎりを作って生計を立てていました。

あるとき、海外の安価な両替え刃のこぎりが出てきて、大変な苦難に襲われてしまいます。

とんでもないことが起きた、自分の人生が終わった、と言っているくらいだから、いかに衝撃的なことだったかよく分かります。

 

しかし、東さんは決してモノづくりをあきらめませんでした。

ある時、客に言われた小さなのこぎりが欲しいという話にヒントを得ます。

作ったのは、手のひらにも満たない、極小サイズののこぎりでした。

変化を恐れることなく、果敢に挑戦を続けていく東さんの姿勢は素晴らしいの一言です!

 

生活が苦しいことは子どもたちも分かっていました。

実際、子どもたちは父親のことを見て、内心バカにしたりしていたのです。

のこぎりなんかで生活できるはずがない、と。

東さんも、子どもたちのそんな視線は感じていたのでしょう。

しかし、東さんは決してあきらめることはありませんでした。

 

極小のこぎりは、知らないあいだに海を渡っていました。

イタリアのヴァイオリン修復師が、ヴァイオリンを解体するときに、使っているのが、東さんの、のこぎりだったのです。

その工房は、ヴァイオリンの銘器として知られる「ストラディヴァリウス」の修復を任されるほどの、大変著名な工房です。

オーナーのイタリア人が、東さんの、極小のこぎり無くして仕事はできない、と言います。

プロが認める本物の道具、というところに、とてつもない説得力を感じます。

 

イタリアのヴァイオリン修復師と、のこぎり職人の東さんの関係性が、本当に素晴らしい。

道具を通じて尊敬し合える仲というのは、一流職人同士の凄みを感じさせてくれます。

ドラマや作り物では絶対に生み出すことができない、大変素晴らしい神回でした。

心に残った本、感動する映画、これまでいろんなものを見てきたけれど、和風総本家のこの回は、わたしの人生においてもかなりの上位を占めるほどに、心揺さぶられる素晴らしい回だったのです。

終わったころには、涙を抑えることができませんでした。

 

テレビはいろいろと揶揄されることが多いですが、まだまだ捨てたものではないと思います。

時間も予算を限られている中で、これほど質の高い番組はなかなかできるものではありません。

職人たちが素晴らしいのはもちろんだけど、この番組を通じて、プロのテレビマンの仕事を見せてもらったように思います。

この番組を作った製作者には心から敬意を示したいと思います。

>和風総本家で紹介された 中長鋸製販はこちら

 

わたしはクラシック音楽が好きで、ヴァイオリンやチェロなどに対して、特に深い愛着を感じています。

『海峡を渡るヴァイオリン』などの著作も大好きで、夢中になって読んだりしました。

わたしがもっとも深く敬拝する天才チェリスト、ジャクリーヌ・デュ・プレは、全録音収録をCDとして持っています。

ジャクリーヌ・デュ・プレに関しては、別のブログで本記事ばりに熱く語っているので、興味のある方は是非ともご覧下さい。

ジャクリーヌ・デュ・プレの思い出 ~チェロをめぐるひととき~

※アイキャッチ画像は、HPより拝借いたしました。

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